診療案内

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日常生活の中で起こりうる、感じうるようなことを
きっかけにクリニックを受診され、そこで脳の病気なり怪我が判明することも少なくありません。
すこしでも異変を感じたら、すぐに受診ください。

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認知症

理解する力や判断する力の低下「認知症」

40歳代ごろから人や物の名前が思い出せなかったり、若い頃より記憶力が落ちてしまう体験をする方は多いと思いますが、この多くは加齢に伴う生理的な「物忘れ」で、「認知症」とは異なります。

認知症は、いろんなことが分からなくなる、徘徊や怒りっぽくなるなどの印象があると思いますが、認知症とは、『獲得した記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断といった高次脳機能が日常生活や社会性生活に支障をきたすほどに持続的に障害された状態』を指します。

日本では65歳以上の高齢者の約15%(2012年)を占め、2025年には認知症者数は675万人〜730万人に達するとも言われています。
アルツハイマー型認知症(67%)、血管性認知症(19.5%)、レビー小体型認知症(4.3%)を合わせて「三大認知症」と呼び、認知症全体のおよそ約90%を占めます。
この三大認知症は基本的に完治することはありませんが、認知機能の進行抑制や軽度の改善、認知症に伴う症状をお薬でうまくコントロールしながらケアを行なっていくことが大切です。

一方で、残りの10%の中には、『治る可能性のある認知症』が含まれ、これを見逃さないようにすることも重要です。
当院ではまず、画像検査(MRI/CT)や血液検査を行なって、『治療可能な認知症』ではないかを積極的に調べることに重点を置いています。

診察や検査の結果を含めてご本人、ご家族に説明しながら、今後の方向性を共に考えていきます。

Specific case 認知症の症状

脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、
実行機能の低下などの「中核症状」と呼ばれるものです。
中核症状によって引き起こされる二次的な症状を「行動・心理症状:BPSD」と言います。

中核症状が現れることによって、精神的に落ち込んだり、
できないことに焦りを感じたり、不安になったりと、本人がもともと持っている
性格や環境、人 間関係など様々な要因が絡み合って起こる症状が行動・心理症状です。

時間・場所がわからなくなる

日付や曜日がわからなくなる、 慣れた道で迷うことがある、 出来事の前後関係がわからなくなる

もの忘れ(記憶障害)

数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる、同じことを何度も言う・聞く、しまい忘れや置き忘れが増えて昔から知っている物や人の名前が出てこない、同じものを何個も買ってくる

理解力・判断力が低下する

手続きや貯金の出し入れができなくなる、状況や説明が理解できなくなる、運転などのミスが多くなる

日常生活ができなくなる

仕事や家事・趣味の段取りが悪くなる、身だしなみを構わなくなる、食べこぼしが増える、洗面や入浴の仕方がわからなくなる、失禁が増える

行動・心理症状:BPSD

不安、一人になると怖がったり寂しがったりする
憂うつでふさぎこむ、何をするのも億劫がる、趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなる
怒りっぽくなる、イライラ、些細なことで腹を立てる
誰もいないのに、誰かがいると主張する(幻視)
自分のものを誰かに盗まれたと疑う(もの盗られ妄想)
目的を持って外出しても途中で忘れてしまい帰れなくなってしまう

当院で認知症(疑い)に用いる検査

当院ではまず診察・検査を行なって、『治療可能な認知症』を見逃さないように努めます。

主な検査方法

問診(病歴)、神経学的診察
比較的短期間での進行や神経診察での異常(麻痺や歩行障害)、認知症以外の症状がある場合は、病気によって認知症を起こしている可能性があります。

認知機能評価(HDS-R、MMSEなど)
認知機能障害のスクリーニングを行う検査です。認知機能はの経時的変化を捉えるために数ヶ月おきに行ない変化の程度を確認します。

血液検査
ビタミン欠乏やホルモン異常、感染症などが原因の認知症でないかを調べます。

画像検査(CT/MRI)
脳の萎縮の程度や血管性認知症の原因となる脳血管障害の有無などを調べることができます。
中でも正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、脳腫瘍といった認知機能低下の原因になる病気の発見には必須の検査です。

VDRAD(MRI画像解析ソフト)
MRIで撮影したデータを専用のソフトで解析することで脳の局所的な萎縮を評価できる検査です。

治療可能な認知症①

ビタミン欠乏症
ビタミン欠乏に伴って認知機能が低下することがあり、血液検査を行うことで診断が可能です。代表的なものはビタミンB1欠乏症、ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症です。
ビタミンB1欠乏症は、アルコールや偏食が原因となり、認知機能低下以外にも進むと意識の状態が悪くなったり、眼の動きの異常、バランスがとれないといった症状を引き起こします。ビタミンB12欠乏症と葉酸欠乏症はアルコールや偏食の他に腸の吸収障害が原因となります。
ビタミンB12欠乏症では認知機能低下に加えて貧血や精神症状、自律神経症状を伴うこともあります。
葉酸欠乏症では、精神症状を伴うことがあります。

甲状腺機能低下症
甲状腺自体またはホルモン分泌に関わる脳の一部の異常によって引き起こされます。甲状腺に関わる血液検査を行うことで診断可能です。
また脳の異常が疑われる場合はMRI検査が有用です。
甲状腺機能低下症では、認知機能低下に加えて抑うつ症状や不安、集中力の低下などの症状が見られます。

治療可能な認知症②

正常圧水頭症
脳脊髄液という脳や脊髄の周るを循環している液体が排泄障害などを原因に溜まってしまい、障害を起こす病気です。
水頭症にも幾つかの原因がありますが、高齢者に多く、原因が不明の髄液吸収障害による水頭症を特発性正常圧水頭症と呼びます。
正常圧水頭症の主な症状は歩行障害、認知症、尿失禁です。
MRI/CT検査で脳室(脳脊髄液で満たされている部分)が拡大しているなどの特徴的な症状がないかを調べます。
さらにタップテストよよばれる髄液を実際に抜いてみて症状が良くなるかを調べることで診断できます。
正常圧水頭症と診断された場合、有効な治療は、シャント手術になります。
脳脊髄液を逃す手術を受けることで、症状改善が期待できます。

慢性硬膜下血腫
頭部外傷後、通常1~2カ月かけて、頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)と脳の間にじわじわと血液がたまって血腫ができる病気です。
血腫が大きくなり脳を圧迫することで、頭痛、物忘れ、認知症によく似た症状(意欲の低下、性格の変化、反応の低下など)、歩きにくさ、片方の手足に力が入らないなどさまざまな症状をきたします。
高齢者に多くみられ、人口10万人あたり年間1~2人程度が発症するとされています。

三大認知症

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していくことで起きる認知症です。
症状はもの忘れなので軽い症状で発症することが多く、ゆっくりと進行します。
記憶障害、見当識障害の他に大事な物が無くなった、盗られたと家族を責めたりする「物盗られ妄想」や、外へ出てウロウロする「徘徊」、お風呂に入らないなどの「介護拒否」などが見られるようになります。
その他、特徴的な症状に取り繕いなどがあります。好発世代は70歳以上で、女性の患者数が多く、その割合は男女比で1:2ほどです。

血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による認知症です。障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。
症状はゆっくり進行することもあれば、階段状に急速に進む場合もあります。
このほかにも神経症状(運動・感覚障害、言語障害 など)、喜怒哀楽のコントロールができないといった症状もみられることも多いようです。
また、血管性認知症にアルツハイマー型認知症が合併している患者さんも多くみられます。

レビー小体型認知症
現実には見えないものが見える幻視を特徴とする認知症です。
手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)がみられることもあります。
このほかにもレム睡眠行動障害、立ちくらみや失神といった自律神経症状も現れるようになります。

認知症の物忘れに対する対応は?

もし家族が認知症だった場合、その物忘れは認知症の「症状」です。
対応する側は、責めたりイライラしたりせず、理解することが重要です。

本人にとっては「経験していない出来事」

例えば夕食を食べたにも関わらず、まだ食べてないと言い張るような場面の場合、つい「今食べたでしょう」と言ってしまったり、同じことを何度も言わなければならないことにうんざりすることもあるでしょう。
しかし、夕食をたびたび催促することも、同じことを何度も尋ねることも、本人にとっては経験していないからに他なりません。
頭から否定せず「お茶でも飲んで待っててね」など、気をそらす返答をしてみるのが効果的です。

物忘れを補う工夫をする

薬の飲み忘れがないようカレンダーに印をつける、食事を摂ったら朝昼晩それぞれカードを作って裏返しておく、お薬カレンダーを活用するなど、目に見える形でルールを作っておくと、本人にも説明しやすい場合があります。
その他、キッチンで火をつけたまま忘れる、タバコに火をつけたまま忘れるなど、火に関する物忘れは火事につながる危険がありますので、周囲の方の十分な注意が必要です。

異変に気づいたら早めの受診を

認知症は早期発見が重要です。早めに診断されて治療を始めれば、進行を遅らせたり、日常生活の工夫で改善できることもあるからです。

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